VPNとは、正式名称を「Virtual Private Network」といい、日本語だと「仮想専用通信網」と翻訳されます。
VPNを使用することによって、共有で使用している回線を仮想的に独立した専用回線であるかのようにすることができます。
利用に際して、合法・違法という言葉が出てくることがありますが、日本での使用は合法です。
しかし、海外でVPNを使用したいといった場合には、違法となる場合があるため、注意が必要です。
こちらの記事では、海外でのVPN利用を検討している方や、違法性について疑問を持っている方に向けて、VPNが違法になる場合について解説していきます。
みなさまの参考になれば幸いです。
VPNの利用は違法?合法?
VPNの利用は、違法な場合と合法な場合があります。
多くの国で、VPNの利用は合法とされています。
VPNを使用することで、リモートワークに対応しやすかったり、セキュリティコストを削減できるといったメリットがあります。
リモートワークを行う場合、公共のWi-Fiを使用する人もいると思います。
公共のネットワークを使用するということは、公共のネットワークを使用している人であれば誰でも自身が操作している情報にアクセスできるということになってしまいます。
情報にアクセスされてしまうと、企業情報の漏洩や顧客情報の漏洩という事態になりかねません。
リモートワークが普及している現代では、必要不可欠なものとなってきています。
デメリットとしては、通信品質の低下やセキュリティリスクです。
多くのVPNサービスは、公衆回線を使用するため、利用者が多くなると通信速度が下がってしまうという恐れがあります。
また、VPNはセキュア通信ができますが、完全なリスク排除ができるというわけではありません。
あくまでも仮想回線であり、純粋な自社回線ではないため、サイバー攻撃を受ける可能性もあります。
日本でのVPNの利用は合法
日本や欧米の多くの国でのVPNの利用は合法です。
合法な国では、上記のようなメリット・デメリットを考慮した上で、快適な通信を試みることができますが、高いレベルの検閲と何らかの政治的抑圧を伴う権威主義国家では違法となり、VPNを利用することで懲役刑になる場合、また、VPN利用を違法とみなすのみならず、VPN接続を完全にブロックする措置をとる場合もあります。
日本では、違法・犯罪行為に利用しない限りVPNの利用は合法なため、日本での利用は問題はないですが、他の国で利用を検討している方はその国に併せて使い方に気をつける必要があります。
合法としている多くの国では、プライバシーの保護やセキュリティの強化、公共のWi-Fiのセキュリティ強化などを目的として使用されていることが多いです。
日本でのVPN利用はまだあまり浸透しておらず、利用率は10%以下ですが、VPN利用が合法なアメリカでは利用率が約16%、イギリスでは約15%で、海外では、利用率が10%以上のところが多数あります。
VPNの利用を制限している国
VPNの利用が制限される理由として挙げられるのが、情報統制・言論の弾圧・政治的に不利なコンテンツへのアクセス防止です。
特に内戦や紛争が多い国では、国民の混乱を最低限に抑えるために制限しているという理由も付け加えられます。
VPNは、基本的にセキュリティ強化やプライバシー保護で使用され、日常的なインターネット利用や、ビジネスシーンで利用されることが多いですが、一部の国では、政府の検閲や監視から逃れるために使用される場合があります。
国によっては、一定の条件を満たした場合にのみVPNの使用が認められていますが、その条件のほとんどは、本来VPNを使用して得られる恩恵が享受されないものとなっています。
その条件として挙げられるのは、当局がVPNユーザーの監視が可能で、政府の定める基準を満たすVPNであるということです。
監視をされていては、VPNの本来の目的が遂行できません。
日本のような民主主義国家でも、そもそも違法な行為は、VPNを使用しても処罰を受けることになります。
LINEやYoutubeが使用できないということもあるため、日本以外の国でVPNを使用したい場合は、きちんと調べてから使用するようにしましょう。
違法としている国または厳しく制限している国
VPNの利用を違法としている、もしくは厳しく制限している国は、内戦や紛争が多いため国家が安定しておらず、反政府のコンテンツを国民に見せないために、VPNを制限する措置をとっている場合が多いです。
また、制限することによる国メリットとして挙げられるのが、国家安全保障やフェイクニュース拡散の防止です。
インターネットは国民にとって主要な情報源です。
そのため、インターネットが悪用されてしまうと国家の安全保障を守ることができなくなってしまいます。
フェイクニュースなどが拡散されると、国民が混乱を起こしてしまう恐れがありますが、正しい情報を見極めて国民に伝えることで、混乱が起こるのを最小限にすることができます。
このような理由で、制限を課しています。
このような国々では、インターネットの自由度が極めて低い傾向があり、VPNの利用を違法、もしくは厳しく制限しています。
しかし、制限があることによって、国民へのデメリットも生じてきます。
例えば、情報の不透明さ、コミュニケーションや言論の自由の制約が挙げられます。
制限や制約を受けることにより、国民は、特定の情報の取得が難しくなったり、情報源が政府に依存し、不透明なものとなってしまいます。
さらに、コミュニケーションや言論の自由が制約を受けることによって、国民の言論の自由に制約がかかってしまったり、家族や友人とコミュニケーションをとるのが難しくなってしまうといったことが生じかねません。
内戦や紛争、自然災害が起こった際に、国民がインターネットを自由に扱えると、様々なメリットがあります。
例えば、安否確認です。
内戦状態では、家族と離れてしまい、安全なところに逃げられているかなど、確認したい方が多くいます。
そういった場合に、SNSなどを使用することで、家族の安否確認ができ、また、集合することもできます。
緊急で治療が必要な場合や支援物資が必要な場合などもXなどのSNSを使うことによって助けを求めることが可能です。
実際、日本でも東日本大震災が起こった際や、2017年に九州北部豪雨の際にSNSを活用して救助隊を派遣するということがありました。
このように、インターネットの活用事例は様々ありますが、VPNを制限し、また、SNSを制限している国では、このような恩恵を受けることができません。
具体的にVPNの使用を制限している国は、中国や北朝鮮、ロシア、ベラルーシ、トルコ、イラク、アラブ首長国連邦、オマーン、イラン、エジプト、トルクメニスタン、ウガンダなどです。
中国
中国は、VPNの利用を厳しく制限していますが、違法であるという意見と違法ではないという意見があります。
言論統制が行われており、主に挙げられるのが、ネットの検閲や情報操作です。
「グレート・ファイアウォール」という検閲システムがあり、これにより様々なウェブサイトへのアクセスを制限しています。
それはなぜかというと、反政府のコンテンツや政府に対して不利益が生じるコンテンツが見れなくするためです。
「グレート・ファイアウォール」とは・・・
中華人民共和国本土のインターネットを覆う大規模情報検閲システムとその行政機関の通称。1998年に運用開始。一般的に中国国内のみ影響すると思われがちだが、近年、国外にいる中国携帯キャリアの使用者(観光客など)でも、国内同様で閲覧できないサイトがある現象も出てきた。
(引用元:Wikipedia)
しかし、政府の基準を満たし、認可されているVPNを使用することは可能です。
その基準とは、バックドアアクセス、ログ、検閲のことを指します。
認可されていないVPNを使用し、違法と認定されると懲役刑になりますが、実際のところ、今までに中国でVPNを使用したことが原因でそのような措置を受けたという事例は多くはありません。
中国で使用できるVPNとして挙げられるのが、NordVPN、Millen VPN、ExpressVPNです。
これらは日本でも知名度が高く、信頼できるVPNサービスです。
また、セキュリティもしっかりしており、安心して利用することができます。
以上のVPNは中国でも使用ができるものですが、中国でVPNを使用する場合は、ネットワークが不安定になったり、アクセスがいつブロックされてもおかしくありません。
しかし、VPNはそもそも利用していることを隠すことができるものになるので、中国側がそのアクセスを切断することは極めて困難です。
北朝鮮
北朝鮮では、現地の住民がVPNを利用すると違法となっています。
観光客や他国の人が利用するのは問題ないですが、北朝鮮では、中国よりもインターネット検閲が厳しく、国民がインターネット自体利用するのが困難という状況です。
北朝鮮がVPNの利用や厳しいインターネット検閲をしている理由は、情報統制のためです。
北朝鮮でVPNの使用をすると、懲役刑になる可能性もあるため、十分注意しましょう。
ロシア
ロシアでも、情報統制を行うために、VPNの使用を制限しています。
ロシア国民が閲覧できる情報を厳しく制限しているため、SNS等もVPNを利用してのアクセスを違法としています。
ベラルーシ
ベラルーシでも、VPNの使用は違法です。
違法にしている理由は、政府への組織的な抗議を抑制するためで、政府が監視できる範囲内でインターネットの利用をするようにしています。
また、インターネット検閲を掻い潜れるソフトウェアの利用もブロックしています。
イラク
イラクは、特定のアプリなどの閲覧を制限しており、2014年には、VPNの使用が法律で禁止されました。
法律で禁止された理由としては、ISISなどのテロ組織によるSNS発信によって国民に影響を与えることを防ぐためです。
オマーン
オマーンでは、国民が規制を掻い潜るために、承認されていないVPNの利用をすることを違法としています。
情報の暗号化を法律で禁止していますが、承認を受けたVPNやオマーンの電気通信規制庁(TRA)が認可した機関や組織は例外で使用が認められています。
イラン
イランでも、認可を受けたVPNの利用は可能です。
しかし、多くのSNSは規制が入っており使用することができません。
サイバー警察により、インターネット監視を行っており、反政府デモなどの厳しい規制を行っています。
トルクメニスタン
トルクメニスタンでのVPNの使用は違法です。
インターネット検閲が厳しい国として有名で、インターネットの利用を厳しく制限しています。
制限付きで合法としている国
VPNの使用を制限付きで合法としている国は、エジプト、トルコ、アラブ首長国連邦、ベネズエラです。
エジプト
エジプトでは、VPNは違法ではなく、犯罪に使用するのが違法とされています。
また、反政府的なコンテンツへのアクセスも違法とされています。
違法行為を行うと、罰金や刑罰を受ける可能性があるため、注意が必要です。
トルコ
トルコでは、VPNの使用自体は違法ではありませんが、FaceTimeやX、Youtubeなどのサイトやアプリの使用をブロックしています。
ブロックする目的は、テロの防止です。
反政府的なコンテンツを国民に見られないようにすることで、多くのSNSがブロックされています。
アラブ首長国連邦
アラブ首長国連邦では、VPNの使用自体は制限されていません。
しかし、違法行為に使用することや政府が禁止しているサイトにアクセスすると、トラブルに巻き込まれる可能性があるので注意が必要です。
LINEも利用することができないので、VPNの契約がおすすめです。
ベネズエラ
ベネズエラでも、VPNの使用は違法ではありません。
しかし、政府の検閲や情報管理、監視によって一部サイトがブロックされていますが、VPNを使用することで政府からの監視を避けることができます。
合法だが事実上制限されている国
VPNの利用自体は合法でも、事実上制限されている国もあります。
それが、ウガンダとシリアです。
ウガンダ
ウガンダが事実上制限されているのは、経済的理由です。
VPNの使用自体は違法ではありませんが、2018年にSNS利用に課税することを決定した際に、それを回避する目的でVPNが使用されていたため、規制されています。
そして、当局による監視の可能性もあると言われています。
シリア
シリアでは、政府がインターネットのアクセスやコンテンツを制限しており、VPNの使用自体は合法ですが、国民がVPNを利用して情報統制を避けることが頻発しているため、一部のVPN接続はブロックされています。
内戦や政治的な理由により、情報規制が厳しく行われています。
VPNの利用についてよくある質問
VPNの利用に際し、わからないことがたくさん出てくると思います。
ここからは、VPN利用に関してのよくある質問をまとめました。
無料と有料の違いについて
無料のVPNサービスは、有料のVPNサービスに比べてサーバー数・安全性・通信速度が劣っています。
利用できるサーバーが少ない上に、利用できる国も少ないです。
さらに、安全面では、有料に比べてセキュリティ性能が低いのみならず、マルウェアやウイルスに感染してしまう危険性もあります。
以上の点から、無料のVPNサービスよりも有料のVPNサービスを利用することが望ましいです。
VPNのメリット・デメリット
VPNのメリットはたくさんあります。
その中でも、最大のメリットと言えるのが、匿名でセキュリティ面の充実したインターネット通信が行えることです。
また、リモートワークに適しているという点もメリットと言えます。
近年、リモートワークが普及してきており、自宅や外で仕事をする人が増えてきています。
その際、VPNを使用していないと、社内情報や、顧客情報の漏洩という心配が出てきます。
それを防ぐことができるのが、VPNです。
社外から離れている場所でも、仮想回線技術を使用することによって、高いセキュリティで安心な通信を行うことができます。
モバイル端末からもアクセスできるのもメリットです。
さらに、コストをかけずに安全な通信環境を整えることができます。
通常、専用線を使用しようとすると、構築や維持費が生じてきます。
しかし、VPNは、仮想的に独立した専用回線であるため、運用のコストを抑えることが可能です。
一方、デメリットとして挙げられるのが、通信速度です。
多くの人が利用するサーバーでは、同じ回線を使用している人が多いと、通信速度が落ちてしまうという事態が生じる場合があります。
また、情報漏洩リスクが完璧ではありません。
各VPNでセキュリティレベルに違いがあり、初期設定などでしっかりと設定しておかないと、セキュリティを最大限利用することができない場合があります。
DNSやIPの漏洩の可能性が出てきてしまうため、注意しましょう。
さらに、通常低コストで利用できるVPNですが、ものによってはコストがかかってしまう恐れがあります。
色々なオプションが搭載されているサービスもありますが、自分の用途に合ったサービスを選択することでコストを抑えることができます。
Torrent(トレント)にVPNを使用するのは合法か
コンテンツに著作権があり、著作権者の許可がない場合は違法になります。
上記のような場合以外は、Torrent(トレント)にVPNを利用することに違法性はありません。
VPNを使用することによってIPアドレスを隠し、プライバシーを保護することはできますが、著作権侵害を促進するものではありません。
警察によるVPN接続の追跡は可能か
警察によるVPN接続の追跡は事実上不可能です。
警察がVPN利用時の通信データを追跡しようとする場合、まずISP(インターネットサービスプロバイダ)に接続ログを要求します。
その後接続先のVPNサービスに接続ログを要求するところまでは可能ですが、その後の暗号化されたデータを警察が解析することは簡単ではありません。
また、VPNサービスは、ノーログポリシーを掲げているところが多く、そもそも警察に渡すことができるログ事態残されていない場合が多いです。
そのため、セキュリティがしっかりしているVPNサービスを利用している場合、警察が追跡できる可能性は極めて低いです。
VPNの種類について
→VPN接続には大きく4つの種類があります。
1つ目は、インターネットVPNです。
インターネットVPNは、既存のインターネット回線を活用VPN接続で、インターネットに接続されていれば利用することができます。
そのため、少ないコストで利用することができますが、通信速度や品質は、利用しているインターネット環境に帰属します。
2つ目は、エントリーVPNです。
インターネットを利用せず、低コストな光ブロードバンド回線と閉域網を利用してネットワークを構築します。
特定の人しか利用できないため、セキュリティを確保しつつ、低コストでVPNを利用することができます。
ただし、ネットワークの速度が遅くなる場合があります。
3つ目は、IP-VPNです。
IP-VPNは、接続にプロバイダなどの通信事業者の閉域IPネットワーク網を利用するため、通信事業者と契約者のみが利用できるネットワークになっています。
閉ざされたネットワークなため、ある程度の通信帯域が確保されており、安定した通信環境を手にいれることができます。
ただし、コストが高くなってしまう可能性があります。
4つ目は、広域イーサネットです。
広域イーサネットは、様々なルーティングプロトコルを使用することができるため、柔軟なインターネット構築が可能になります。
高度な設定が必要という方には適していますが、簡単に設定したいという方には不向きです。
柔軟な設定が可能なため、自身が使用したいネットワークシステムにすることができますが、提供事業者によっては、回線の料金が高かったり、選択肢が少ない、また、通信できる帯域の範囲が狭いという場合があるので、広域イーサネットを使用する場合には、事前調査が必要です。
VPNの違法性についてまとめ
VPNの違法性についてご紹介しました。
VPNは、IPアドレスを隠し、匿名で通信することができるため、安全にインターネットを使用できるようになります。
近年増えているリモートワークでも、企業の情報や顧客情報を守るために、VPNは必要不可欠なものになってきています。
VPNへの関心も年々高まってきました。
また、日本国内でしか視聴できないコンテンツを海外でも視聴できるのは大きなメリットです。
しかし、中国や北朝鮮などの国によっては、違法となっていたり、厳しく制限されており、VPNを使用することによって処罰をうける場合があります。
日本でVPNを使用するのは違法行為に使用しない限りは合法ですが、国外でVPNを使用する場合には、注意が必要です。
VPNを規制している国でも、認可されたものであれば利用できるところもあるため、どのVPNが認可されているかを調べて、利用をしましょう。
無料のVPNサービスもありますが、セキュリティ面で脆弱な部分があるため、有料のVPNサービスを利用することをお勧めします。